超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 45(5): 504-508 (2020)
doi:10.11272/jss.322

症例報告Case Report

下大静脈に進展した卵巣静脈血栓症の1例A Case of Ovarian Vein Thrombosis that Extended to the Inferior Vena Cava

高知医療センター医療技術局Department of Medical Technology, Kochi Health Science Center

受付日:2020年3月23日Received: March 23, 2020
受理日:2020年7月20日Accepted: July 20, 2020
発行日:2020年10月1日Published: October 1, 2020
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患者は30代の女性.羊水過多で加療および経過観察していたが,妊娠33週,右足の痛みと倦怠感を訴え受診し,入院となった.入院時血液検査ではD-dimer 6.1 µg/mLと高値を示し,深部静脈血栓症検索の目的で下肢静脈超音波検査を行った.妊娠の影響で,左右腸骨静脈の描出は深部走行のため評価困難であったが,総大腿静脈より末梢に血栓を疑う充実性エコーは描出されなかった.入院7日目,凝固異常増悪を認め,再度,下肢静脈超音波検査を実施したが,血栓は指摘されず,同日帝王切開が施行された.造影CTでは静脈の造影は不明瞭であったが,右卵巣静脈血栓症の可能性が疑われた.腹部超音波検査にて,肝門部レベルで下大静脈に2.2×1.7×3.5 cmの充実性エコーを認めた.充実性エコーはだるま状の形態を呈し,血流に伴う可動性を認めた.右卵巣静脈は末梢側で最大径2.0 cmと拡張し,内部に不均一な充実性エコーを認めた.右卵巣静脈内の血栓が進展し,下大静脈に到達していると考えられた.妊娠中は生理的に凝固亢進状態になることが知られており,本症例では,妊娠,羊水過多による圧排が原因となって,血流のうっ滞が起こり,血栓が形成されたと考えられた.右卵巣静脈内の血栓が,下大静脈に進展した1例を経験した.下大静脈内に血栓を認めた際には,右卵巣静脈や左右腎静脈など,合流する血管からの進展も念頭に置く必要があると考える.

Key words: postpartum ovarian vein thrombosis; inferior vena cava thrombosis; ultrasound

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