超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 47(4): 363-370 (2022)
doi:10.11272/jss.358

症例報告Case Report

subclavian double steal phenomenonを伴った腕頭動脈狭窄が原因と考えられた頸動脈浮遊血栓の1例A Case of Carotid Free-floating Thrombus Caused by Stenosis of the Brachiocephalic Artery with Subclavian Double Steal Phenomenon

1獨協医科大学埼玉医療センター超音波センターUltrasound Diagnostic Center, Dokkyo Medical University Saitama Medical Center

2誠馨会新東京病院脳神経外科Clinical Department of neurosurgery, New Tokyo Hospital

受付日:2021年8月17日Received: August 17, 2021
受理日:2022年4月6日Accepted: April 6, 2022
発行日:2022年8月1日Published: August 1, 2022
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症例は80代女性.左半身に力が入らず,3日後も症状が改善しないために外来受診し,頭部CT検査で右中大脳動脈領域の脳梗塞を認め,緊急入院となった.頸部MRA検査では,右総頸動脈から末梢側の描出が不良であったことから閉塞が疑われ,保存的に加療していた.頸動脈超音波検査で,右頸動脈分岐部から内頸動脈にかけて長さ33 mm×幅6 mmの頸動脈浮遊血栓を認めたため,脳梗塞の原因と考えられた.さらに,腕頭動脈に高度狭窄を認め,右椎骨動脈の逆流と右頸動脈に逆行性を有する特異な血流波形が記録されたことによりsubclavian double steal phenomenonが疑われた.血栓形成の原因は腕頭動脈高度狭窄によるものと判断し,今後,血栓が遠位血管を閉塞し病状が進行する可能性があることから,頸動脈内膜剥離術,血栓摘除術,腕頭動脈ステント留置術が行われた.術後は血流の改善を認め,経過は良好であった.脳梗塞の原因診断と治療方針の決定,血行動態の把握に頸動脈超音波検査が有用であったので報告する.

Key words: double steal phenomenon; steal syndrome; free-floating thrombus; brachiocephalic artery; innominate artery

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