超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 47(5): 490-497 (2022)
doi:10.11272/jss.366

症例報告Case Report

正中弓状靱帯圧迫症候群による総肝動脈の逆行性血流をドプラエコーで確認し得た1手術例The Blood Regurgitation of Common Hepatic Artery Due to Median Arcuate Ligament Compression Syndrome Revealed by Doppler Echo—A Case Report

1地方独立行政法人りんくう総合医療センター臨床検査科Department of Clinical Laboratory, Rinku General Medical Center

2地方独立行政法人りんくう総合医療センター外科Department of Surgery, Rinku General Medical Center

受付日:2021年10月25日Received: October 25, 2021
受理日:2022年7月25日Accepted: July 25, 2022
発行日:2022年10月1日Published: October 1, 2022
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症例は40代,女性.胃部不快感からの食欲低下を主訴に紹介来院.3年間で体重は13 kg減少,初診時体重は26 kgと著明なるい痩を認めた.血液所見では軽度の肝機能障害と低カリウム血症,腎機能障害を認めた.悪性腫瘍の除外のため実施した超音波検査において吸気時に腹腔動脈起始部の狭窄が生じ,血流シグナルの消失と総肝動脈,胃十二指腸動脈の逆行性血流シグナルを認めた.腹腔動脈起始部には硬化性病変や腫瘍性病変による影響は認められず,正中弓状靭帯による圧迫狭窄を疑った.腹部造影CT検査では腹腔動脈は起始部で高度狭窄を認め,膵アーケードによる還流により下膵十二指腸動脈は拡張し,胃十二指腸動脈の血流は逆行性血流を疑った.正中弓状靱帯圧迫症候群と診断し正中弓状靭帯切離術を施行した.術中正中弓状靭帯切離後に腹腔動脈の拡張を目視で認めた.術後の超音波検査では腹腔動脈の呼吸による血流変化は改善され,総肝動脈,胃十二指腸動脈は順行性血流シグナルとなった.正中弓状靱帯圧迫症候群では呼気相に狭窄が増強するとされるが,自験例では吸気相に狭窄を認め,腹腔動脈狭窄部から末梢側血流の消失を超音波検査でリアルタイムに確認し,側副血行路の逆行性血流シグナルを認めた.呼吸による変動を周囲脈管も含め観察することが本疾患を発見し血行動態の評価の一助になると考えられた.

Key words: median arcuate ligament syndrome; celiac artery stenosis; blood regurgitation of common hepatic artery

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