超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 47(4): 388-397 (2022)
doi:10.11272/jss.372

症例報告Case Report

冠状動脈塞栓と心室中隔穿孔をもたらした感染性心内膜炎の1例A Case of Infective Endocarditis Resulting in Coronary Artery Embolization and Interventricular Septal Perforation

1日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院臨床検査科Department of Clinical Laboratory, Japanese Red Cross Aichi Medical Center Nagoya Daini Hospital

2日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院循環器内科Department of Cardiovascular Medicine, Japanese Red Cross Aichi Medical Center Nagoya Daini Hospital

3日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院心臓血管外科Department of Cardiovascular Surgery, Japanese Red Cross Aichi Medical Center Nagoya Daini Hospital

受付日:2021年12月28日Received: December 28, 2021
受理日:2022年5月26日Accepted: May 26, 2022
発行日:2022年8月1日Published: August 1, 2022
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症例は40代男性.既往はアトピー性皮膚炎.当院救急外来に発熱,意識障害にて搬送された.来院時の意識レベルはGCS: E3V4M5. 体温40.2°C,感染性心内膜炎(IE)を疑ったが,頻脈であったため心雑音の聴取は困難であり,経胸壁心エコー検査(TTE)の評価も困難であった.採血,髄液検査の結果,菌血症および髄膜炎疑いで入院となり,翌日の血液培養にてMSSAが検出された.入院後もIEを疑い,第2病日にTTEを施行.壁運動異常および大動脈弁逆流(AR)を認めた.左室の壁運動はびまん性に低下し,特に心室中隔から心尖部の壁運動は著明に低下していた.第8病日に経食道心エコーを施行し大動脈弁右冠尖,左冠尖間の弁輪に疣腫を確認した.同部位からもARを確認し,経時的に増加していた.ARの増加に伴い心不全を来したため,準緊急的に外科的治療を行う方針となったが,術前に心室細動となり緊急手術を実施.術後経過は良好でリハビリを進めていた.術後18日目にTTEを施行したところ,術前に高度壁運動低下していた心室中隔の中部は菲薄化し瘤状となり,同部位で左室から右室へ向かう短絡血流を認め,肺体血流比は1.40であった.TTEにより心室中隔穿孔と判断され,翌日緊急に閉鎖術を施行することとなった.今回,我々は非常にまれなIEによる冠動脈塞栓に心室中隔穿孔を合併した1例を経験し,経胸壁心エコー検査が有用であったので報告する.

Key words: infective endocarditis; coronary artery embolism; ventricular septal perforation

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