超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 47(6): 603-610 (2022)
doi:10.11272/jss.385

症例報告Case Report

右室内血栓を認めた抗リン脂質抗体症候群の1例A Case of Right Ventricular Thrombus in a Patient with Antiphospholipid Syndrome

1国立循環器病研究センター臨床検査部Department of Clinical Laboratory, National Cerebral and Cardiovascular Center

2国立循環器病研究センター心臓血管内科Department of Cardiovascular Medicine, National Cerebral and Cardiovascular Center

3国立病院機構大阪医療センター臨床検査科Department of Clinical Laboratory, National Hospital Organization Osaka National Hospital

受付日:2022年4月1日Received: April 1, 2022
受理日:2022年8月11日Accepted: August 11, 2022
発行日:2022年12月1日Published: December 1, 2022
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症例は20代女性.数年前に下腿浮腫で近医受診し下肢深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症,精査で抗リン脂質抗体症候群(APS)と診断された.抗凝固療法を開始し軽快するも,再度肺高血圧症増悪し当院へ紹介となった.肺動脈血栓内膜摘除術,バルーン肺動脈形成術を行い,抗凝固療法は継続で退院,今回1年後の検査入院となった.経胸壁心エコー図検査で肺高血圧症はなく,右室拡大や壁運動異常も認めなかった.右室中部の肉柱発達部位に12×14 mmの球状の腫瘤を認め,辺縁は比較的整,心筋組織と比較して等輝度で軽度可動性を有した.APSは血栓形成し易いため血栓を疑ったが,抗凝固療法下で右室に構造的異常もないため,腫瘍も否定できず他の画像検査を施行した.経食道心エコー図検査では腫瘤は肉柱部に広基性に付着し,MRI,造影CT検査でも腫瘍は否定的で,血栓を疑い抗凝固療法を強化した.経過の経胸壁心エコー図検査では腫瘤は縮小し,1年後には消失した.APSは抗リン脂質抗体により血液凝固能が亢進し,動・静脈血栓症を繰り返す疾患である.本例は,右室の構造的・機能的異常がなく,適切な抗凝固療法下で右室内血栓を認めた.APSのような血液凝固能が亢進する疾患では,より注意深く心腔内を観察し,特に複雑な形態の右室では多断面からの観察が重要である.今回,右室内血栓を認めたAPSの1例を経験し,その検出,経過観察に心エコー図検査が有用であった.

Key words: right ventricular thrombus; antiphospholipid syndrome

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