超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 48(2): 158-166 (2023)
doi:10.11272/jss.394

症例報告Case Report

乳房皮下に発症した関節リウマチ治療中に発生するリンパ腫様肉芽腫症に対して造影超音波検査を施行した1例A Case of Rheumatoid Arthritis-associated Lymphomatoid Granulomatosis of the Skin in the Breast Evaluated by Contrast-enhanced Ultrasonography

1北海道大学病院 検査・輸血部Division of Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital

2北海道大学病院超音波センターDiagnostic Center for Sonography, Hokkaido University Hospital

3北海道大学病院放射線部Department of Radiological Technology, Hokkaido University Hospital

4北海道大学病院放射線診断科Department of Diagnostic and Interventional Radiology, Hokkaido University Hospital

5北海道大学病院乳腺外科Department of Breast Surgery, Hokkaido University Hospital

6北海道大学病院リウマチ・腎臓内科Department of Rheumatology and Nephrology, Hokkaido University Hospital

7北海道大学病院病理診断科Department of Surgical Pathology, Hokkaido University Hospital

受付日:2022年5月9日Received: May 9, 2022
受理日:2023年1月6日Accepted: January 6, 2023
発行日:2023年4月1日Published: April 1, 2023
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症例は60代女性.主訴は右乳房腫瘤の自覚.関節リウマチに対し4年前の11月よりメトトレキサート,3年前の3月よりウパダシチニブを内服継続していた.202X年8月主訴に対し超音波検査施行.右A区域皮下に22×17×12 mmの部分的に境界不明瞭な楕円形の腫瘤を認めた.辺縁は極低エコーで内部の大部分は高エコー,カラードプラ法で辺縁の極低エコー部分に点状の血流信号を認めた.乳腺外であり脂肪壊死を鑑別とした.2か月後24×19×14 mmと軽度増大,辺縁の極低エコー部分の範囲も増大し,極低エコー部分の血流信号は明らかに増加した.造影超音波検査では動脈相で辺縁に豊富な造影効果を認め,中心部の高エコー部分の造影効果は不良.静脈相で辺縁の造影効果は減弱した.孤立乳腺組織に発生し中心部が壊死した浸潤癌や粘液癌,脂肪壊死に感染を伴った病変,または内服歴から関節リウマチ治療中に発生するリンパ増殖性疾患を鑑別とした.MRIでは右A区域皮下に楕円形腫瘤を認めた.拡散強調像で辺縁は高信号,拡散係数は低値.造影早期から辺縁は濃染,中心部の造影効果はみられず一部にwash outを認めた.針生検ではリンパ増殖性疾患として矛盾せず,リンパ腫様肉芽腫症を疑う病理組織所見であった.メトトレキサート,ウパダシチニブ休薬後に病変は著明に縮小した.我々が検索した範囲で乳房皮下に発症した関節リウマチ治療中に発生するリンパ増殖性疾患に対し造影超音波検査を施行した報告はなく,初めての症例であると考える.関節リウマチで免疫抑制薬投与例における軟部組織の不均一な低エコー腫瘤は,リンパ増殖性疾患の可能性を考慮して精査を進める必要がある.

Key words: lymphoproliferative disorders; lymphomatoid granulomatosis; skin; rheumatoid arthritis; contrast-enhanced ultrasonography

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