超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 48(3): 272-282 (2023)
doi:10.11272/jss.395

研究Research Paper

R–P時間比による下肢動脈の血行動態的評価ABIとの比較Hemodynamic Assessment of Lower Extremity Arteries by R–P Time RatioComparison with ABI

1東邦大学医療センター大橋病院臨床生理機能検査部Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Ohashi Medical Center

2東邦大学医療センター大橋病院循環器内科Division of Cardiovascular Medicine, Toho University Ohashi Medical Center

受付日:2022年5月16日Received: May 16, 2022
受理日:2023年3月14日Accepted: March 14, 2023
発行日:2023年6月1日Published: June 1, 2023
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目的:下肢動脈の血行動態的指標として有用性を報告してきたR–P時間比を足関節/上腕血圧比(Ankle Brachial Index: ABI)と比較検討した.

対象:2019年6月~2020年12月までに下肢動脈エコーとABIを同時期に施行し,不整脈や弁膜症を伴うもの,大動脈や腸骨動脈に病変を認めた症例,計測部位で狭窄や閉塞,逆流している症例は除外した456例中,足関節部まで病変を認めなかった59例を対照群,総大腿動脈~足関節部の前脛骨動脈もしくは後脛骨動脈の間に病変を認めた397例を病変群とした.

方法:総大腿動脈,前脛骨動脈および後脛骨動脈にてR–P時間を計測し,前脛骨動脈/総大腿動脈R–P時間比,後脛骨動脈/総大腿動脈R–P時間比を算出し,病変の存在部位別に対照群と病変群の有意差およびROC曲線下面積を求め,最適カットオフ値を算出しABIとR–P時間比で比較検討した.

結果:全病変存在部位別にて病変群は対照群と比較し,ABIは有意に低値,R–P時間比では有意に高値を示し,負の相関を認めた.カットオフ値をABIで0.90, R–P時間比はROC曲線より算出された1.32前後とした場合,膝下および膝上+膝下の複合病変群でR–P時間比はABIより感度が高かった.

考察:ABIは膝下病変を含む病変群に関しては,必ずしも評価したい血行路の血流を反映していない可能性が考えられるが,RPRは鼠径部から足関節部までの総大腿動脈~前脛骨動脈,総大腿動脈~後脛骨動脈それぞれの血行動態を評価することができる優れた指標であると考えられる.

結語:下肢動脈の血行動態的評価として,膝下病変が含まれる場合,ABIよりR–P時間比は鋭敏に評価できる可能性が示唆された.

Key words: R–P time ratio (RPR); duplex ultrasound; lower limb artery disease; hemodynamic assessment; ABI

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