超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 40(5): 501-506 (2015)
doi:10.11272/jss.40.501

学術賞-研究Researcher's Award - Research Paper

下大静脈の形態および呼吸性変動における体位の影響The Postural Effects on Inferior Vena Cava Shape and Respiratory Fluctuation

群馬県立心臓血管センター技術部Division of Medical Techniques, Gunma Cardiovascular Center ◇ 〒371-0004 群馬県前橋市亀泉町甲3番地12Ko-3-12 Kameizumi-machi, Maebashi-shi, Gunma 371-0004, Japan

受付日:2015年1月31日Received: January 31, 2015
受理日:2015年8月1日Accepted: August 1, 2015
発行日:2015年10月1日Published: October 1, 2015
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目的:心エコー検査において,下大静脈の形態や呼吸性変動の有無は,一般的に仰臥位にて観察するが,下大静脈は外圧や内圧により容易に変形するため,患者体位による影響も大きいと推察される.今回我々は,体位による下大静脈の径,短軸断面積および呼吸性変動の影響を検討した.

対象と方法:対象は健常者22名である.体位は,仰臥位,左側臥位,右側臥位,座位で行った.検討項目は下大静脈短軸像の最大短径,最大長径および最大断面積,呼吸性径変動率とした.各体位で求めたこれらの項目を仰臥位の値と比較した.

結果:最大短径は,仰臥位と比較し左側臥位で有意に小さく,右側臥位で有意に大であった.最大長径は有意差を認めなかった.最大断面積は左側臥位で有意に小,右側臥位で有意に大であった.呼吸性変動率は右側臥位と座位で有意に小さく,仰臥位で最大であった.

考察:左側臥位では肝が下大静脈の上に位置するため肝の重量により外圧が上昇し,かつ,下大静脈が右房より上位に位置するため静水圧が減少したことで内圧が減少し,下大静脈が縮小したと考えられた.一方,右側臥位では肝が下大静脈の下に位置することから外圧が軽減し,また,下大静脈が右房より下位に位置するため静水圧が上昇したことで内圧は上昇し,下大静脈が拡大したと考えられた.座位では重力により静脈還流が制限されたことで,右側臥位では外圧の軽減により吸気時にも末梢からの還流が維持され,呼吸性径変動が減少したと考えられた.

結語:下大静脈形態および呼吸性変動は体位により有意に変化する.下大静脈の評価は,理論上は仰臥位が望ましいと考えられる.心エコー検査は通常左側臥位で行うため,一連の検査の中で下大静脈の評価を左側臥位で行うことは実際的と考えるが,下大静脈径および断面積を仰臥位と比較し過小評価する可能性があることは留意する必要がある.

キーワード:下大静脈;右房圧;仰臥位;左側臥位;右側臥位

Key words: inferior vena cava; right atrial pressure; supine position; left decubitus position; right decubitus position

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