超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 49(2): 131-137 (2024)
doi:10.11272/jss.404

症例報告Case Report

先天性無フィブリノゲン血症患者の多発動脈血栓の評価にSuperb microvascular imaging(SMI)を活用した1例A Case of Using Superb Microvascular Imaging (SMI) in the Evaluation of Multiple Arterial Thrombi in a Patient with Congenital Afibrinogenemia

1名古屋大学医学部附属病院医療技術部臨床検査部門Department of Medical Technique, Clinical Laboratory, Nagoya University Hospital

2名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科Department of Neurosurgery, Nagoya University of Graduate School of Medicine

3名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学Department of Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University of Graduate School of Medicine

4修文大学医療科学部臨床検査学科Department of Clinical Laboratory, Shubun University

5名古屋大学医学部附属病院検査部Department of Clinical Laboratory, Nagoya University Hospital

6名古屋大学医学部附属病院輸血部Department of Transfusion Medicine, Nagoya University Hospital, Nagoya, Japan

受付日:2022年12月13日Received: December 13, 2022
受理日:2023年12月5日Accepted: December 5, 2023
発行日:2024年4月1日Published: April 1, 2024
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症例は50代,女性.先天性無フィブリノゲン血症にて通院,加療されていた.202X年10月,C型慢性肝炎の既往に対する腹部超音波検査において腹部大動脈の右腎動脈分岐部付近に偶発的に11×6 mmの血管壁と等輝度の構造物を認め,腹部大動脈の壁在血栓が疑われた.その後施行した胸腹部造影CTにおいても腹部大動脈の壁在血栓が疑われたが,治療適応はなく経過観察となった.同年11月,塞栓源不明の脳梗塞を発症し,MRIにおいて右中大脳動脈領域に散在性梗塞巣,右頸動脈洞に軽度狭窄を認め,入院加療となった.入院中に行った頸動脈超音波検査では,右頸動脈洞に4 mmの低輝度プラークを認めたが,血液検査では高脂血症,糖尿病などの動脈硬化因子は認めず,12誘導心電図検査ならびに経胸壁心臓超音波検査においても異常所見は認めなかった.脳梗塞の原因は頸動脈低輝度プラークに起因することが疑われたため,フィブリノゲン製剤の定期補充とともに,アスピリンによる抗血栓療法が開始され,翌年の超音波検査で腹部大動脈壁在血栓の縮小,右頸動脈洞のプラークにおいても縮小を認めた.右頸動脈洞の低輝度プラークは,治療開始から2週間後に明らかに退縮を認めた臨床経過から,先天性無フィブリノゲン血症が要因で生じた血栓であると推測された.今回の症例では,Superb microvascular imaging(SMI)の活用により従来法であるBモードやカラードプラ法では得られなかった動脈血栓の性状ならびにプラーク内出血を評価したことが,適切な診断や治療効果判定に繋がった.

Key words: congenital afibrinogenemia; mural thrombus; ischemic stroke

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