超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 41(3): 261-267 (2016)
doi:10.11272/jss.41.261

症例報告Case Report

超音波検査が診断に有用であったGroove pancreatic carcinomaの1例—画像所見におけるGroove pancreatitisとの比較を中心に—Utility of Ultrasonography for Diagnosis of Groove Pancreatic Carcinoma by Imaging Comparison of Groove Pancreatic Carcinoma with Groove Pancreatitis

1国立病院機構嬉野医療センター臨床検査科Department of Clinical Laboratory, National Hospital Organization Ureshino Medical Center

2国立病院機構嬉野医療センター放射線科Department of Radiology, National Hospital Organization Ureshino Medical Center

3国立病院機構嬉野医療センター病理診断科Department of Clinical pathology, National Hospital Organization Ureshino Medical Center

受付日:2015年12月10日Received: December 10, 2015
受理日:2016年2月12日Accepted: February 12, 2016
発行日:2016年6月1日Published: June 1, 2016
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症例は80代,女性.主訴は食後の嘔吐,近医受診後,症状改善がみられないため,精査,加療目的に当院に紹介,入院となった.上部消化管内視鏡検査では,上十二指腸角後壁に潰瘍と狭窄を認めた.超音波検査では膵頭部に形状不整な低エコー腫瘤が認められ,十二指腸側へ突出しているように観察された.大きさは径22×15×16 mm, 輪郭一部不明瞭,内部不均一,血流信号は検出されなかった.腹部造影CT検査ではGroove領域に動脈相で不整な低吸収域,後期相で淡く造影される境界不明瞭な領域が観察され,十二指腸には狭窄が認められたが,Groove領域を走行する胃十二指腸動脈に浸潤を疑う所見は指摘できなかった.画像上Groove pancreatic carcinomaを疑う脈管浸潤所見は認められず,Groove pancreatitisを示唆する十二指腸粘膜下や腫瘤内の囊胞成分も認められなかったが,超音波検査および超音波内視鏡検査でGroove pancreatitisに典型的なシート状ではなく腫瘤様に観察されたことから,encasementのみられないGroove pancreatic carcinomaが最も疑われた.生検で腺癌の診断がつき,膵頭十二指腸切除術が施行されGroove pancreatic carcinomaと診断された.

Groove領域に主座をおく膵癌はGroove pancreatic carcinomaと呼ばれ,解剖学的に特殊な領域であることから,主膵管の狭窄や拡張など,膵頭部癌に特徴的な所見を呈しにくい.かつこのGroove pancreatic carcinomaは非常にまれで,Groove pancreatitisと,臨床的にも,画像的にも類似する点が多く,鑑別困難なことが少なくない.今回我々はその鑑別診断において,超音波検査が有用であった1例を経験したのでここに報告する.

Key words: Groove pancreatic carcinoma; ultrasonography; Groove pancreatitis

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