超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 41(4): 400-406 (2016)
doi:10.11272/jss.41.400

症例報告Case Report

僧帽弁輪石灰化の経過観察中に,左室流出路側に可動性腫瘤が認められた1例Left Ventricular Outflow Tract Mobile Mass Echo in the Follow up Mitral Annulus Calcification: A Case Report

1済生会中和病院医療技術部Department of Medical Technology, Saiseikai Chuwa Hospital

2天理よろづ相談所病院臨床検査部Department of Laboratory Medicine

3天理よろづ相談所病院循環器内科Department of Cardiology, Tenri Hospital

受付日:2016年1月28日Received: January 28, 2016
受理日:2016年6月12日Accepted: June 12, 2016
発行日:2016年8月1日Published: August 1, 2016
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心エコー検査において,心腔内の異常構造物の存在に遭遇した際には,心臓の正常および異常解剖の理解,アーチファクトの理解,腫瘤性病変の特徴に関する理解が鑑別の決め手となる.今回我々は,心膜液貯留および僧帽弁輪石灰化にて経過観察中に,左室流出路側に可動性腫瘤を認めた1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

症例は78歳女性,10年前に心拡大を指摘されたため心エコー検査が実施され左室壁肥厚と心膜液貯留を認めた.以来,1年に1~2回外来にて保存的に経過観察中であった.初回検査から通算15回目の検査時に,石灰化した僧帽弁前尖後交連側の左室内に可動性を有する腫瘤を認めた.腫瘤の性状は音響陰影を伴わず,茎は明確に判断できなかったが,疣腫様で感染性心内膜炎を疑う所見であった.CRP陰性,血液培養は4回とも陰性で感染性心内膜炎は否定的であったこと,CTおよびMRI所見,経食道心エコー検査による精査の結果から,石灰化した僧帽弁輪の一部が剥離し浮遊している可能性が考えられた.短期間に性状が変化していたため,心原性塞栓症のリスクを回避するために腫瘤の摘出手術となり,病理結果は,フィブリンの石灰化成分を含んだものであった.

キーワード:僧帽弁輪石灰化;左室流出路腫瘤;可動性腫瘤;心エコー検査

Key words: mitral annular calcification; mass of the left ventricular outflow tract; mobile components; echocardiography

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