超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 42(2): 175-180 (2017)
doi:10.11272/jss.42.175

症例報告Case Report

左室心筋解離の1手術例A Surgical Case of Left Ventricular Dissection

1高知大学医学部附属病院検査部Department of Clinical Laboratory, Kochi Medical School, Kochi University

2高知大学医学部附属病院病態情報診断学講座Department of Laboratory Medicine, Kochi Medical School, Kochi University

3高知大学医学部附属病院老年病・循環器内科学講座Department of Cardiology and Aging Science, Kochi Medical School, Kochi University

受付日:2016年4月7日Received: April 7, 2016
受理日:2016年12月10日Accepted: December 10, 2016
発行日:2017年4月1日Published: April 1, 2017
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症例は20歳代男性.生育歴・家族歴に特記事項なし.17歳時にバイク運転中に自動車と正面衝突し,緊急開腹手術を施行した.入院後,約1か月で自覚症状なく退院した.21歳時に職場の健診で心雑音を指摘され,22歳時に階段昇降や坂道歩行で息切れを自覚するようになったため当院を紹介受診した.身体所見でIII音と汎収縮期雑音を聴取した.経胸壁心エコー図(TTE)では,前乳頭筋付着部位付近の左室前側壁心筋が心室中部から心尖部にかけて解離したように観察され,これにより僧帽弁は前尖・後尖ともに逸脱し,高度僧帽弁閉鎖不全をきたしていた.経食道心エコー図(TEE)では,TTEと同様に左室前側壁の心内膜側心筋が心室中部から心尖部にかけて解離したように観察され,解離腔と思われる腔形成を認めた.カラードプラ法では,拡張期に心室中部から解離腔内に流入する血流シグナルを認めた.術中所見では左室前乳頭筋の左室後側壁付着部が断裂し,左室心内膜側に心筋解離を生じ,僧帽弁が全体的に弁輪より左房側へ逸脱していた.手術は左室後側壁と解離した心筋を縫着し,前乳頭筋付着部を左室側に固定したことで僧帽弁逆流が消失したため弁形成術は施行されなかった.本症例で胸部外傷後の心臓損傷の診断にTTE, TEEが有用であったので報告する.

キーワード:左室心筋解離;外傷性僧帽弁閉鎖不全;胸部外傷

Key words: left ventricular dissection; traumatic mitral regurgitation; thoracic trauma

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