左室収縮能低下を合併した巨大左室憩室の1例An Adult Case of Isolated Left Ventricular Large Diverticulum with Left Ventricular Systolic Dysfunction
国立循環器病研究センター臨床検査部Department of Laboratory Medicine, National Cerebral and Cardiovascular Center
国立循環器病研究センター臨床検査部Department of Laboratory Medicine, National Cerebral and Cardiovascular Center
まれな巨大左室憩室の1例を経験し,若干の知見を得たので報告する.症例は20歳台男性.主訴は特になし.他院で左室後側壁の瘤様構造物および左室収縮能の低下を認めたため,当院に精査目的で入院となった.心電図所見は心拍数:51拍/分,洞調律,非特異的心室内伝導障害.心臓超音波検査では左室後側壁基部側に大きな異常腔(30 mm×44 mm)を認め,左室は拡大し,収縮能は全体的に低下していた(LVDd/Ds: 69/50 mm, LVEF: 41%(modified Simpson法)).異常腔の壁はやや薄く他の領域と比較して壁運動の低下を認めるが,収縮しているように観察された.また,2Dスペックルトラッキング法(2DST法)を用いて,異常腔部の心筋ストレインについて解析を行ったところ,その他の領域に比べて低値ではあるが異常腔部にも収縮が確認された.さらに異常腔と左室腔間の血流パターンを評価したところ,拡張早期を主体として左室腔側から異常腔側方向に向かい,その他の時相は異常腔側から左室腔側へ向かう血流波形が得られ間接的な所見ではあるが,異常腔部の心筋は収縮しているものと推察された.これらのことから,瘤様構造物の心筋自体の収縮性があることを証明でき左室憩室と判断した.また,冠動脈造影検査では有意狭窄はなく,心臓超音波検査以外にRI・MRI検査でも異常腔領域の心筋成分の存在と壁運動が確認された.左室憩室は一般に自覚症状がなく,心電図異常などで偶然に発見される比較的まれな先天性心奇形である.頻度としては左室造影施行例の約0.26%といわれ,本症例のような巨大憩室はその中でも非常にまれである.本例は心臓超音波検査によって,異常腔部の心筋収縮の存在を断層法・2DST法・パルスドプラ法など複数の方法で評価し,異常腔壁が収縮期に収縮していることから異常腔部は筋性憩室であると考えた.
キーワード:左室憩室;2Dスペックルトラッキング法;心臓超音波検査
Key words: left ventricular diverticulum; 2D speckle tracking echocardiography; echocardiography
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