超音波検査技術

目的：従来の心エコー検査において左室流出路面積は左室流出路径を計算し，正円形と仮定した上で面積＝（半径）²×πとして算出しているが，左室流出路面積は楕円形であることが報告されている．そこで今回，経食道3次元心エコー法（3DTEE）を用いて算出された左室流出路面積をゴールドスタンダードとして，経胸壁2次元心エコー法（2DTTE）および経胸壁3次元心エコー法（3DTTE）で算出した面積を比較・検討した．さらに，S字状中隔を有する症例について左室流出路面積への影響についても検討した．

対象と方法: 2015年6月～2016年5月に当院で心臓超音波検査を施行し，3DTTEでの計測が可能であった連続60症例（男性33名，女性27名），平均年齢：57.6±19.9歳を対象とした．はじめに3DTTEの正確性を検証するために，3DTEEと3DTTEを用いて同日に行った10例において左室流出路面積を比較した．2DTTEでは左室流出路径を計測し，面積＝（半径）²×πとして算出した．3DTTE, 3DTEEでは大動脈レベル短軸像から3DQソフトを用いてX, Y, Z軸の3方向から修正することで左室流出路断面が画面に向かって水平になるように描出し，その面積をトレースした．またS字状中隔群（12例）と非S字状中隔群（48例）に分けて，両群における左室流出路面積についても比較・検討した．

結果と考察: 3DTTEはゴールドスタンダードである3DTEEに近似した面積を算出することが可能であった．3DTTEで求めた面積に比べ2DTTEで求めた面積は全症例において低値であり，左室流出路面積は前後方向に対して左右方向に長い楕円形と示された．さらにその形は左室流出路径（前後径）に対して一定の割合で左右に延長しているのではなく，個人によって異なった楕円形であると考えられた．またS字状中隔群（S群）と非S字状中隔群（Non-S群）との面積差の比較では，S群では面積差3DTTE−2DTTE＝0.95±0.36 cm², Non-S群では面積差3DTTE−2DTTE＝0.70±0.36 cm²であり，両群間には有意な差が認められた（p＜0.05）．

結語：左室流出路面積は楕円形であり，従来の2DTTEでは左室流出路径を用いたうえで正円形と仮定しており実際の面積に比べ過小評価している．楕円の形状は個人によって異なるものであり，3DTTEを用いた正確な面積算出が望ましい．日常検査では2次元メインの経胸壁心エコー検査であるが，正確な左室流出路面積の算出には3DTTEによるトレース法が有用である．