超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 42(3): 263-270 (2017)
doi:10.11272/jss.42.263

研究Research Paper

心エコーにおけるプローブを走査する手の違いが検者の身体負担に与える影響Effects of Scanning the Probe with Right or Left Hand on Operator’s Physical Load During Cardiac Ultrasonography

1東京逓信病院臨床検査科Department of Clinical Laboratory, Tokyo Teishin Hospital

2株式会社日立製作所ヘルスケアビジネスユニット診断システム事業部マーケティング本部戦略マーケティング部デザイングループDiagnostic Systems Division Marketing Division Strategic Marketing Department Design Group, Hitachi, Ltd, Healthcare Business Unit

3千葉大学大学院工学研究科人間生活工学研究室Graduate School of Engineering, Humanomics Lab. Chiba University

受付日:2016年10月21日Received: October 21, 2016
受理日:2017年2月10日Accepted: February 10, 2017
発行日:2017年6月1日Published: June 1, 2017
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はじめに:心エコーはプローブ走査を右手で行う方法と左手で行う方法があるが,これらの走査姿勢による検者の身体負担の差異は明らかではない.今回我々は,表面筋電図と主観評価を用いて右手走査,左手走査の身体負担を評価し,比較を行った.

対象:20歳代の右利きの大学生8名とした.

方法:心エコーの模擬走査(傍胸骨走査および心尖部走査)を左右の手で行い,上肢および体幹の計8筋の表面筋電図で筋負担を,主観評価スケール法で模擬走査中の肩,腕,手関節,腰の疲労感を評価した.また,対象者の身長と筋負担との相関を検討した.

結果:筋負担は,右手走査では上腕二頭筋,心尖部走査の尺側手根伸筋,尺側手根屈筋,傍胸骨走査の左脊柱起立筋で大きく,左手走査では傍胸骨走査の三角筋,尺側手根伸筋で大きかった.疲労感は,右手走査では傍胸骨・心尖部走査ともに腰部で強く,左手走査では傍胸骨走査の手関節で強かった.右手走査では傍胸骨走査,心尖部走査いずれも尺側手根伸筋の筋負担と身長に強い負の相関を認め,左手走査では傍胸骨走査長軸像において,浅指屈筋,尺側手根屈筋,左右脊柱起立筋の筋負担と身長に強い正の相関を,心尖部走査において,尺側手根屈筋と身長に強い負の相関を認めた.

考察:対象者の走査姿勢と体格により負担の大きい筋が異なることが明らかとなった.特定の筋に対する疲労の蓄積を防ぎ,検者の将来的な筋骨格系障害のリスクを低減させるためには,必要に応じて右手走査,左手走査を選択する事がひとつの手段であると考えられる.

キーワード:心エコー;走査姿勢;身体負担

Key words: cardiac ultrasonography; scanning posture; physical load

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