超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 42(3): 278-284 (2017)
doi:10.11272/jss.42.278

症例報告Case Report

DVTの経過を契機に悪性腫瘍およびTrousseau症候群の診断に至った1例A Case Report of Malignant Tumor and Trousseau Symdrome Incidentally Found with a Deep Vein Thrombosis

1医仁会武田総合病院検査科Department of Clinical Laboratory, Takeda General Hospital

2滋賀医科大学医学部付属病院検査部Department of Clinical Laboratory, Shiga University of Medical Science Hospital

受付日:2016年9月12日Received: September 12, 2016
受理日:2017年2月10日Accepted: February 10, 2017
発行日:2017年6月1日Published: June 1, 2017
HTMLPDFEPUB3

【症例】65歳男性【主訴】下腿浮腫【既往歴】痛風,高血圧【現病歴】他院にて左下肢の深部静脈血栓症を指摘され,内服治療するも改善がなく自己退院.退院後症状が悪化し,当院循環器内科受診となった.【来院時現症】身長164 cm,体重65.4 kg,心拍数82/分,血圧104/78 mmHg,心音整,心雑音聴取せず,呼吸音整,左下腿浮腫【心電図検査】正常洞調律【胸部X線】CTR56.7%,肺うっ血なし【来院時下肢超音波検査】左浅大腿静脈~膝窩静脈閉塞,その他の部位には明らかな血栓認めず【入院後の経過】抗凝固療法継続にも関わらず,超音波検査にて右外腸骨静脈~膝窩静脈に新たな血栓を認めた.造影CT検査にて肺塞栓を認めたため,IVCフィルターが留置された.その後の超音波検査にてIVCフィルター内に新たな血栓を認めた.DVT原因検索のためPET-CTを施行し,肺癌(下葉),骨転移やリンパ節転移を認め,悪性腫瘍による過凝固状態がDVT多発の原因と考えられた.抗癌剤治療が開始されたが,左上肢の違和感が出現し頭部MRI検査にて多発性脳梗塞を認めた.塞栓源検索のため施行した心臓超音波検査にて大動脈弁に塊状エコーを認めた.内服治療にて経過観察されていたが,感染コントロール不良により病状が悪化し,肺炎にて永眠された.【考察】下肢静脈超音波検査を行う際,血栓の増大縮小や新たな部位に血栓形成されていないか詳細に評価することは,抗凝固治療効果判定に非常に重要となる.また本症例のように抗凝固治療中にもかかわらずDVTの造悪を認めた場合には,Trousseau症候群も念頭におき,非細菌性血栓性心内膜炎の有無など観察することで,合併症予防に繋がったのではないかと考えられる教訓的1例であった.

Key words: Trousseau symdrome; Deep vein thrombosis (DVT); Ultrasonography; Malignant tumor; Nonbacterial thrombotic endocarditis (NBTE)

This page was created on 2017-04-11T16:20:48.85+09:00
This page was last modified on 2017-05-26T15:40:17.637+09:00


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。