超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 42(1): 46-53 (2017)
doi:10.11272/jss.42.46

研究Research Paper

弁口面積による大動脈弁狭窄の重症度評価—低心拍出が与える影響—The Assessment of the Severity of Aortic Stenosis by Valve Area—the Impact of Low Flow—

1心臓血管研究所付属病院臨床検査室Clinical Laboratory, The Cardiovascular Institute Hospital

2日本大学大学院理工学研究科College of Science and Technology, Nihon University

受付日:2016年4月11日Received: April 11, 2016
受理日:2016年10月21日Accepted: October 21, 2016
発行日:2017年2月1日Published: February 1, 2017
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目的:弁抵抗値(RES)は,流量に関わらず重症の大動脈弁狭窄(AS)を判別できることが過去の報告により明らかになっている.本研究の目的は,中等度以上のAS例において,RESを参照して,弁口面積(AVA)による重症度評価に対する心拍出量の影響を検討することである.

方法:2000年2月から2012年6月に心エコー図検査を施行し,AVAが1.5 cm2以下であった連続990例(男性426例,75歳±10歳)を対象とした.回帰分析を用いてAVAとRESの関係,および心拍出量による影響を検討した.心拍出量の検討では一回拍出量係数(SVi)により2群に分けた(SVi>35 ml/m2をNormal Flow(NF)群,SVi≤35 ml/m2をLow Flow(LF)群).AVAによる重症ASの基準は1.0 cm2以下とし,RESによる基準は過去の研究結果から150 dyn·sec·cm−5以上とした.NF, LF群間で比較し,AVAの流量依存性とAVAによる重症度評価の妥当性を検討した.

結果:AVAとRESは反比例関係にあり,RESが上昇するほどAVAが低下した.LF群では,NF群と比較して回帰曲線は下方に偏位していた.RES 150 dyn·sec·cm−5に相当するAVAは,NF群では0.86 cm2であったが,LF群では0.76 cm2と小さかった.RESを基準とするとAVAにより重症度を過大評価された症例が16%存在していたが,LFの症例に限るとその比率は22%に上った.

結語:低流量はAVAによるASの重症度評価を過大評価させる大きな要因であり,心エコー図検査を用いた評価に大きな影響を及ぼしていることを認識すべきである.ASの重症度評価には,AVAの計測のみならず心拍出量の計測結果を加味することが重症度の判断に重要であると考えられる.

Key words: aortic stenosis; aortic valve area; aortic valve resistance; low flow

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