超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 42(5): 497-505 (2017)
doi:10.11272/jss.42.497

症例報告Case Report

パルスドプラによるFFT解析が治療方針決定に有用であった早期の小腸絞扼状態と判断しえた症例—癒着性イレウス,ヘルニア嵌頓例との比較も含めて—FFT Analysis by Pulsed Doppler Sonography Was Useful for an Early Diagnosis and Determining the Treatment Policy for Early Stage of Small Intestinal Strangulation: A Case Report

1相模原赤十字病院臨床検査部Department of Clinical Laboratory, Sagamihara Red Cross Hospital

2相模原赤十字病院内科Department of Internal Medicine, Sagamihara Red Cross Hospital

3東芝林間病院外科Department of Surgery, Toshiba Rinkan Hospital

受付日:2016年11月2日Received: November 2, 2016
受理日:2017年6月18日Accepted: June 18, 2017
発行日:2017年10月1日Published: October 1, 2017
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症例は80歳代女性.主訴は上腹部痛,既往歴は子宮筋腫摘除術,関節リウマチ,慢性腎臓病,脂質異常症である.現病歴:受診当日の朝食摂取中に上腹部痛が出現し,昼になっても改善しないため正午頃来院した.触診では圧迫により上腹部痛の軽度増強を認めた.原因精査目的で腹部超音波検査(US)が施行された.USではイレウス状態であったため,腸管を追跡したところ,ループ形成を伴う収束部を同定しえた.索状物による絞扼が疑われ,パルスドプラにてループ側の浮腫性肥厚部の壁血流をFFT解析したところ,細動脈の拡張期血流の消失がみられた.静脈絞扼期と推察し,緊急手術を提案した.CTは腎機能を考慮し非造影下で施行されたものの,形態的にはUSと同様の結論に達し,手術の方針となった.しかし,当日は当院での緊急手術が対応不可能な状況であったため近医に紹介の上,同日手術施行となった.イレウス解除の際,一部腸管壊死が疑われたため小腸の部分切除が行われた.

USによる絞扼性イレウスの術前診断は必ずしも容易でないが,絞扼部分が同定できる場合には診断的所見となりえ,確診に近づく.これまでの報告のように腸管虚血の判定は造影超音波が望まれるものの,保険適応外で施行条件は限られる.カラードプラが有用なケースも散見されるが,シグナルの有無が虚血を必ずしも反映しない.今回,FFT解析により早期の小腸絞扼状態と判断しえた症例を経験した.また,若干数の検討であるが,癒着性イレウスとヘルニア嵌頓例とも比較し,手術の要否においてもある程度層別できる可能性があり併せて報告する.

キーワード:絞扼性小腸イレウス;パルスドプラ;FFT解析;抵抗係数

Key words: strangulated small intestine ileus; pulsed doppler; FFT analysis; resistive index

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