超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 42(5): 513-517 (2017)
doi:10.11272/jss.42.513

症例報告Case Report

バルサルバ洞から右冠動脈に陥入するおたまじゃくし様血栓によって急性心筋梗塞をきたした1症例Acute Myocardial Infarction Caused by Embolism of Tadpoles Like Thrombus in the Right Coronary Sinus of Valsalva

1天神会新古賀病院診療支援部臨床検査課Department of Clinical Laboratory, Shin Koga Hospital Social Medical Corporation

2天神会古賀病院21診療支援部臨床検査課Department of Clinical Laboratory, Koga Hospital 21 Social Medical Corporation

3天神会新古賀病院循環器内科Cardiovascular Medicine, Shin Koga Hospital Social Medical Corporation

4国立大学法人九州大学病院循環器内科Cardiovascular Medicine, Kyushu University Hospital National University Corporation

受付日:2017年1月25日Received: January 25, 2017
受理日:2017年6月18日Accepted: June 18, 2017
発行日:2017年10月1日Published: October 1, 2017
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症例は77歳女性.呼吸苦・吐き気を訴え肺塞栓疑いで当院に搬送された.既往歴に脳梗塞,心房細動があった.来院時経胸壁心エコー図検査では,右心系拡大があり,右室と左室下壁基部に壁運動異常を認めた.また,右冠動脈入口部に接して12×9 mmの等-高エコー腫瘤を認めた.胸部造影CTでは,バルサルバ洞から右冠動脈に陥入する低吸収域と,左心耳内に血栓と思われる低吸収域を認めた.

右冠動脈入口部の腫瘤の鑑別疾患として腫瘍・疣贅・血栓が挙げられたが,左心耳内血栓があったため,血栓の可能性が高いと考え,血栓溶解療法施行となった.また造影CT上明らかな肺塞栓は認めなかった.経過観察時の心エコー図検査では,第10病日目に腫瘤は完全に消失し,右室と左室下壁基部の壁運動は若干改善傾向であった.後日再検した胸部造影CTでも,バルサルバ洞付近から右冠動脈に陥入する低吸収域の消失を認めた.これより,バルサルバ洞から右冠動脈に陥入する腫瘤は血栓であり,血栓塞栓症による急性心筋梗塞であると診断された.

本症例のようにバルサルバ洞から右冠動脈に陥入する特異的な形態を呈した血栓を画像としてとらえられた症例は非常に稀であり,診断および経過観察に心エコー図が有用であったため報告する.

Key words: coronary embolism; acute myocardial infarction

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