心エコー図検査にて検出し得た肺動脈四尖弁の1例A Case Report of Quadricuspid Pulmonary Valve Identified by Transthoracic Echocardiography
群馬県立心臓血管センター技術部Department of Medical Technology, Gunma Prefectural Cardiovascular Center
群馬県立心臓血管センター技術部Department of Medical Technology, Gunma Prefectural Cardiovascular Center
症例は,80代女性.肺動脈弁狭窄兼閉鎖不全症および肺動脈瘤の診断で経過観察中.心エコー図検査では,主肺動脈の著明な拡張(53 mm)を認め,右室駆出血流速度は3.0 m/sと上昇していた.弁形態の詳細観察を行うため,高位肋間からアプローチし肺動脈弁(P弁)短軸像の描出を試みたところ,4枚の弁尖が観察された.各弁尖は軽度肥厚するものの,交連部の癒合なく十分に開放していた.一方,拡張期に完全に閉鎖せず,有意な肺動脈弁逆流を生じていた.右室および右房は軽度拡大し,三尖弁逆流から推定される右室収縮期圧は46 mmHgと上昇していたが,右室壁の肥厚なく壁運動も良好であった.CT検査においても同様に,主肺動脈の著明な拡張と4尖のP弁が観察され,肺動脈四尖弁(QPV)と診断された.
先天性の半月弁数異常の中でもQPVの報告は極めてまれである.これは,QPVの多くが臨床症状に乏しいことに加え,P弁が高位心基部に位置するため,解剖学的にP弁短軸像の描出が困難なためと考えられる.今回我々が経過観察中の症例に対し,QPVを検出し得たのは,本症例に生じた経時的な主肺動脈の拡張によりP弁が前方へと偏位し,高位肋間からアプローチすることによってプローブ直下にP弁を捉えることが可能となったためと考えられた.
肺動脈の拡張や機能異常を認めた際には,P弁ならびに弁周囲の形態観察のため,通常の描出方法に加え,高位肋間からアプローチすることが診断精度の向上に有用である.
Key words: Quadricuspid Pulmonary valve; Quadricuspid semilunar valve; Transthoracic Echocardiography; Pulmonic regurgitation
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