超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 42(1): 54-64 (2017)
doi:10.11272/jss.42.54

研究Research Paper

肝癌肉眼分類診断における造影超音波検査の有用性および単純結節型肝細胞癌鑑別の重要性についてAbout the Usefulness of Contrast-enhanced Ultrasonography in Macroscopic Classification Diagnosis and the Importance of Single Nodular Type Hepatocellular Carcinoma Discrimination

1市立函館病院中央検査部生理検査センターDepartment of Central Clinical Laboratory, Hakodate Municipal Hospital

2市立函館病院消化器病センター消化器内科Digestive Disease Center, Gastroenterological medicine, Hakodate Municipal Hospital

受付日:2016年2月12日Received: February 12, 2016
受理日:2016年10月21日Accepted: October 21, 2016
発行日:2017年2月1日Published: February 1, 2017
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はじめに:肝癌肉眼分類は生物学的悪性度を反映し,治療方針を決定する上で重要である.今回我々は当院における肝癌切除例での肉眼型について,造影超音波(以下CEUS)による術前評価と病理所見の比較を行い,一致率および肉眼分類診断結果と再発までの期間,予後との関連について検討したので報告する.

対象と方法:2007年8月~2014年7月に外科的肝切除術を施行した原発性肝癌68例(71結節)を対象とし,腫瘍部と非腫瘍部の境界が明瞭になるCEUS後血管相での超音波像を重視し,後血管相における造影欠損像により腫瘍輪郭,境界,形状等を観察し視覚的に肉眼分類を評価した.判定は臨床医とともに行い,肝癌取扱い規約に従い単純結節型(SN),単純結節周囲増殖型(SNEG),多結節癒合型(CMN)に分類した.術後病理診断との比較で術前画像診断の一致率を算出し,術後の無再発期間,生存期間についても検討した.

結果:CEUSにおいて形状判定した71結節の病理診断内訳はSN23例,SNEG20例,CMN24例,その他4例であった.CEUSでの形状判定一致率はSN71%,SNEG69%,CMN85%であり,他の画像診断による一致率と比較しても劣らない結果を示した.肝癌肉眼型別に見た術後無再発,生存期間評価では,SN群で非SN群よりも無再発期間が長く生存率も高い傾向を示した.

考察:治療方針を決定する上で,CEUS後血管相での形状判定ではSNか非SNかを鑑別することが重要であると考えられ,脈管浸潤や肝内転移の割合が多いとされるSNEGやCMN等における生物学的悪性度の高さを認識できた.予後に関連した境界線としてSNを正しく拾い上げることで,臨床医が求める治療適応決定の際の一助となることが期待される.

結語:肝癌肉眼分類診断において造影超音波検査は有用な検査法の一つであり,単純結節型か非単純結節型かの正しい鑑別が再発や予後に影響を与える因子の一つであることを意識した詳細な形状判定および肉眼分類により,肝癌の治療方針決定に寄与できる可能性が示唆された.

キーワード:単純結節型肝細胞癌;造影超音波検査;肉眼分類診断

Key words: single nodular type hepatocellular carcinoma; contrast-enhanced ultrasound; macroscopic classification diagnosis

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