超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 42(6): 637-647 (2017)
doi:10.11272/jss.42.637

学術賞-研究Researcher's Award - Research Paper

慢性腎臓病と左室長軸方向ストレインとの関連Relation between Chronic Kidney Disease and Left Ventricular Global Longitudinal Strain

1つくばセントラル病院生理機能検査室Division of Clinical Laboratory, Tsukuba Central Hospital

2つくばセントラル病院腎臓内科・透析科Department of Renal and dialysis Medicine, Tsukuba Central Hospital

3つくばセントラル病院循環器内科Department of Cardiovascular Medicine, Tsukuba Central Hospital

受付日:2017年3月31日Received: March 31, 2017
受理日:2017年8月18日Accepted: August 18, 2017
発行日:2017年12月1日Published: December 1, 2017
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目的:慢性腎臓病(CKD)と左室長軸方向ストレイン(GLS)との関連性について検討すること.

対象と方法:対象は冠動脈疾患のない左室駆出率(LVEF)50%以上のCKD症例100例(男性71例,女性29例,年齢68±12歳,LVEF 65±6%)とcontrol 30例(男性14例,女性16例,年齢67±13歳,LVEF 68±5%).CKDの定義は推算糸球体濾過量(eGFR)が60 ml/min/1.73 m2未満とし,eGFRが45~60 ml未満を1群(18例),45 ml未満を2群(18例),透析症例を3群(64例)として,control群を含めた計4群でGLSを比較した.GLSは2Dスペックルトラッキング法を用いて左室心尖部3断面から算出し,臨床所見,血液所見および心エコー図指標との関連について検討した.

結果と考察:臨床所見では,糖尿病症例の割合とbody mass indexにおいて2群が他群に比べて有意に高値を示し(p<0.01),最高血圧は2群,3群でcontrolおよび1群と比べて有意に高値であった(p<0.001).血液所見では尿素窒素,リンが2または3群で有意に高く,ヘモグロビンおよび血清アルブミンは低値を示した(p<0.001).心エコー図所見ではGLSはcontrol群に比して各群で低値を示し,特に2群および3群で有意に低下した(control群22±2% vs. 2群18±4%,p=0.007, 3群18±4%,p<0.001).CKDの進行に伴い相対的壁厚(RWT)および左室重量係数は有意に増加し(p<0.001),CKD3群間の左室形態分布には有意差が認められた(p<0.001).CKDでは多くの危険因子の存在により心内膜下に病変が生じていると考えられ,CKDの進行に伴う潜在的心筋障害をいかに早期に捉えるかが重要である.

結論:慢性腎臓病では左室長軸方向ストレインが低下している.左室長軸方向ストレインはCKDの進展に伴う心筋の肥大や線維化病変を鋭敏に表し,心血管疾患(CVD)の早期診断の一助となり得る有用な指標として期待される.

Key words: chronic kidney disease; cardiovascular disease; global longitudinal strain; glomerular filtration rate

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