超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 42(1): 65-71 (2017)
doi:10.11272/jss.42.65

症例報告Case Report

経胸壁心エコー検査にて左房粘液腫の壊死に伴う腫瘤の性状の変化を観察することができた1例Utility of Transthoracic Echocardiography for Detection of Change in Characteristics of Left Atrial Myxoma Caused by Necrosis: A Case Report

1王子総合病院臨床検査科Department of Clinical Laboratory, Oji General Hospital

2王子総合病院循環器内科Department of Cardiology, Oji General Hospital

3王子総合病院心臓血管外科Department of Cardiovascular Surgery, Oji General Hospital

4KKR札幌医療センター病理診断科Department of Pathology, KKR Sapporo Medical Center

5柴田内科循環器科Shibata Clinic

6札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座Department of Infection Control and Laboratory Medicine, 
Sapporo Medical University School of Medicine

受付日:2016年2月26日Received: February 26, 2016
受理日:2016年10月21日Accepted: October 21, 2016
発行日:2017年2月1日Published: February 1, 2017
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症例は80歳代男性.近医で心房細動と心不全を経過観察中,経胸壁心エコー検査(TTE)にて左房内に腫瘤を認め,精査目的に当院へ紹介となった.当院初診時のTTEにて辺縁平滑,有茎性で可動性を有し,心房中隔に付着する塊状の腫瘤(21×13 mm)を認め,左房粘液腫を疑った.腫瘤摘出術待機中に右橈骨動脈への塞栓症を認め入院となった.初回TTEから18日後にTTEを再検したところ,腫瘤は29×19 mmに増大し,辺縁の輝度は上昇,内部は低輝度となり,性状の変化を認めた.コンピューター断層撮影法で明らかな腫瘍やリンパ節腫大を認めず,原発性心臓腫瘍の可能性が高いと判断した.可動性を有し塞栓症を発症したことから,初回TTEから33日目に腫瘤摘出術を施行した.手術にて細い茎を介して心房中隔と繋がる表面平滑,楕円形の腫瘤(40×15×14 mm)が摘出された.病理組織所見では腫瘤の大部分は壊死組織であり,心房中隔と繋がる茎の近傍に粘液腫を示唆する所見をわずかに認めた.TTEで認めた腫瘤内部の経時的な性状の変化は,粘液腫内部が壊死に陥ったことによるものと考えられた.血栓は腫瘤の表層部に限局しており,TTEで認めた腫瘤辺縁の輝度上昇は,器質化した血栓を反映したものと考えられた.経時的に施行したTTEにより,腫瘤内部の壊死に伴う左房粘液腫の性状の変化を観察することができた1例を経験した.

Key words: transthoracic echocardiography; left atrial myxoma; necrosis; thrombus; embolism

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