超音波検査による虫垂描出での左側臥位追加の有用性および関連する条件の検討
1 岡崎市民病院医療技術局超音波検査室
2 国立長寿医療研究センター先端医療開発推進センター
目的:腹部超音波検査(以下,US)による虫垂描出における左側臥位追加の有用性と,体位の追加により描出率が向上した患者特性と検査条件について診療記録を用いて後方視的に検討した.
方法:2022年1月~10月にUSを施行した患者260名[中央値(範囲):13.5(0–93)歳,うち男性134名]を対象とした(身長もしくは体重未測定の患者は除外).左側臥位追加の有無の2群間で,虫垂描出の可否の割合を比較した.さらに,虫垂描出の可否を従属変数,左側臥位追加の有無,年齢,性別,虫垂炎の有無,肥満の有無,検査者経験年数(10年未満/以上),使用機器(Aplio i800, Canon社製/LOGIQ S8, GE社製)を独立変数として,ロジスティック回帰分析を用いて検討した.
結果:USの虫垂描出率は79%(205/260)で,急性虫垂炎の描出率は88%(22/25)であった.左側臥位を追加した患者は50%(130/260)であった.仰臥位のみ実施した患者の虫垂描出率は72%(93/130),左側臥位を追加した患者の虫垂描出率は86%(112/130)で有意な差を示した(p=0.006).また,左側臥位の追加は有意に虫垂描出率が向上し(p=0.010),女性は男性よりも有意に虫垂描出率が低下した(p=0.049).さらに,左側臥位のみで描出可能であった患者とそれ以外の患者について患者特性と検査条件を比較したところ左側臥位のみで虫垂が描出された例は,比較的年齢が高く(p=0.008),検査者の経験年数は低かった(p=0.044).
結論:虫垂描出には左側臥位追加が有用であり,特に患者年齢が高く,検査者経験が浅い傾向であった.女性は男性よりも虫垂描出率が低下した.
Key words: appendix; left lateral position; ultrasonography
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