超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 43(3): 281-286 (2018)
doi:10.11272/jss.43.281

症例報告Case Report

膵癌との鑑別が困難であった胃癌術後再発の1例A Case of Recurrent Gastric Carcinoma After Total Gastrectomy Confused with Pancreatic Carcinoma

1北海道大学病院検査・輸血部Division of Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital

2北海道大学病院超音波センターDiagnostic Center for Sonography, Hokkaido University Hospital

3北海道大学大学院医学研究院死因究明教育研究センターCenter for Cause of Death Investigation, Faculty of Medicine, Hokkaido University

4北海道大学大学院医学研究院消化器外科学教室IIDepartment of Gastroenterological Surgery II, Faculty of Medicine, Hokkaido University

5北海道大学大学院医学研究院分子病理学教室Department of Pathology, Faculty of Medicine, Hokkaido University

受付日:2017年12月4日Received: December 4, 2017
受理日:2018年3月20日Accepted: March 20, 2018
発行日:2018年6月1日Published: June 1, 2018
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症例は70歳代男性.201X年7月,筋萎縮性側索硬化症(ALS)に伴う誤嚥症状あり,胃瘻造設目的で上部消化管内視鏡検査を施行した際に進行胃癌を指摘.腹腔鏡下胃全摘術を施行.その後ALSが進行し,翌年3月,呼吸困難で当院に救急搬送された.

腹部超音波検査(US)では,膵頭部足側に長径25 mmの境界やや不明瞭な低エコー病変を認めた.病変は膵内胆管へ連続し,同部で内腔は狭窄,中枢側の胆管は著明に拡張していた.膵頭部癌による閉塞性黄疸を疑った.造影CTでは下部胆管狭窄と壁肥厚あり,中枢側胆管はびまん性に拡張.膵内に明らかな腫瘤は指摘されず,胆管癌を疑った.

ALSの予後を考慮し精査は行われず,永眠された.

病理解剖による肉眼所見で膵頭部周囲に白色調病変を認めた.組織所見では,膵頭後部のリンパ節を置換するように異型細胞が腺管構造あるいは大小の胞巣を形成し増殖しており,既往の胃癌病変と同様の組織像であった.膵臓,膵内胆管にも浸潤する病変を認め,リンパ管侵襲像を伴っていた.胃癌再発・転移と診断された.

膵頭後部の低エコー像と胆管への浸潤像は病理組織所見と良く合致しており,USはその所見を捉えることが可能であった.US所見と併せ,既往の胃癌の組織型や進展形式,進行度などを確認することにより胃癌再発を鑑別に挙げることができた可能性がある.

Key words: recurrent gastric carcinoma; ultrasonography; pancreatic carcinoma

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