超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 43(4): 450-457 (2018)
doi:10.11272/jss.43.450

研究Research Paper

乳がん術前化学療法1サイクル終了時における超音波エラストグラフィfat lesion ratio評価による病理組織学的治療効果予測の可能性の検討Prediction of the Histopathological Effects of Treatment Through the Evaluation of Fat Lesion Ratio in Ultrasonic Elastography after One Cycle of Neoadjuvant Chemotherapy for Breast Cancer

1公立福生病院医療技術部臨床検査技術科Department of Clinical Laboratory, Fussa Hospital

2公立福生病院診療部外科Department of surgery, Fussa Hospital

3公立福生病院診療部病理診断科Department of Pathology, Fussa Hospital

受付日:2017年5月25日Received: May 25, 2017
受理日:2018年4月13日Accepted: April 13, 2018
発行日:2018年8月1日Published: August 1, 2018
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目的:現在,乳がん術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)の効果予測にはいくつか報告があるが正確性や侵襲性,簡便性などの点で問題も多い.pCRの強い効果予測因子の一つにNAC2サイクル終了時の反応性が報告されており,我々も同様の結果を得ている.一方でNACにおいて良好な反応性を示す症例では腫瘍の硬さの変化を経験することも珍しくない.そこで非侵襲的かつ簡便に腫瘍の硬さを検査できるエラストグラフィに着目し,NAC1サイクル終了時のエラストグラフィによる評価がNAC終了時の治療効果の有用なサロゲートマーカーとなりうるかを検討した.

方法:2010年8月以降,NAC施行中にエラストグラフィを施行し,手術にて組織学的効果判定のなされた原発性乳がん35例を対象とした.NAC開始前,NAC1サイクル終了時,NAC2サイクル終了時,NAC4サイクル終了時,NAC終了時の超音波Bモード,エラストグラフィによるfat lesion ratio(FLR)を評価した.FLRはB値(脂肪部)/A値(腫瘤部)で求められる値である.FLR値とBモードによる腫瘍長径の変化に関して,NACの著効群(grade 2bと3)と非著効群(grade 0~2a)で比較検討した.

結果:腫瘍長径は著効群も非著効群も同様にNAC 1サイクル終了時から有意に縮小した.一方FLR値は著効群ではNAC 1サイクル終了時で有意に低下したが,非著効群ではNAC2サイクル終了時ではじめて有意な低下を認めた.著効群と非著効群の2群間比較において,腫瘍長径はNAC各サイクル終了時において有意差を認めなかった.一方FLR値はNAC開始前に有意差は無いが,NAC 1サイクル終了時で既に著効群は非著効群に比べ有意差をもって低値であった.またその有意差はNAC終了時まで続いた.

NAC効果の著効,非著効に関して,年齢,腫瘍長径,ER, PgR, HER2, Ki-67, 閉経状態,NAC 1サイクル終了時FLR値において,単変量解析と多変量解析を行った.いずれにおいても有意であった要因はHER2とFLR値(NAC 1サイクル終了時)のみであった.

結語:NAC1サイクル終了時のFLR値の評価は,NAC終了時の著効群のサロゲートマーカーとなりうる可能性が示唆された.

Key words: breast cancer; neoadjuvant chemotherapy; prediction of the early effect; ultrasonic elastography; fat lesion ratio (FLR)

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