偶発的に認めた冠動脈瘤を伴う冠動脈右房瘻の1例
1 高邦会福岡山王病院検査室
2 高邦会福岡山王病院循環器センター
60歳代の男性.薬剤抵抗性心房細動に対するアブレーションを目的として当院を受診した.受診時,第4肋間胸骨右縁に連続性雑音を聴取した.経胸壁心エコーでは心機能に明らかな異常は認めなかったが,上位右房の心房中隔付近より右房内へと流入する異常血流シグナルを認め,連続波ドプラ法では最大血流速度3.6 m/secの連続性血流波形を観察した.異常血流シグナルは心房中隔側に沿うように観察される屈曲蛇行した異常血管との連続性を認め,大動脈弁右冠尖と連続しており,起始部は瘤を形成して観察された.造影CT・大動脈造影でも同様の所見を認め,冠動脈瘤を伴う冠動脈右房瘻が疑われた.右心カテーテル検査では圧負荷は認めなかったが,心腔内酸素飽和度測定で右房内のステップアップを認め,肺体血流量比(Qp/Qs)=1.7,左右シャント率41.6%であった.経胸壁心エコーおよびトレッドミル運動負荷心電図では冠血流の盗血現象を疑う明らかな虚血は認めなかったが,薬剤負荷心筋シンチグラフィーでは右冠動脈領域の虚血が疑われ,左右シャント率30%以上であったため,他院にて冠動脈瘻閉鎖術および冠動脈バイパス術が行われた.
今回我々は,経胸壁心エコーを契機に偶発的に発見された冠動脈瘤を伴う冠動脈右房瘻の1例を経験した.経胸壁心エコーにて心腔内や肺動脈に異常な血流シグナルを認めた際は,冠動脈瘻の存在も念頭において注意深く観察することが必要である.
Key words: coronary artery fistula; coronary aneurysm
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