超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 50(3): 276-285 (2025)
doi:10.11272/jss.439

症例報告Case Report

鈍的脳血管損傷の評価に頸動脈超音波検査が有用であった1例Utility of Carotid Artery Ultrasonography for Diagnosis of Blunt Cerebrovascular Injury

1札幌医科大学附属病院検査部Division of Laboratory Medicine, Sapporo Medical University Hospital

2札幌医科大学医学部 感染制御・臨床検査医学講座Department of Infection Control and Laboratory Medicine, Sapporo Medical University School of Medicine

3医療法人渓仁会手稲渓仁会病院脳神経外科Department of Neurosurgery, Teine Keijinkai Hospital

受付日:2024年6月11日Received: June 11, 2024
受理日:2025年3月26日Accepted: March 26, 2025
発行日:2025年6月1日Published: June 1, 2025
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症例は10代女性.転落による多発外傷により当院高度救命救急センターに搬入された.第1病日の頭頸部CT検査で左頸部内頸動脈(internal carotid artery: ICA)に閉塞所見を認め,鈍的脳血管損傷(blunt cerebrovascular injury: BCVI)と診断された.第6病日の脳血管MRI検査では同動脈の再開通が示唆されたため,左頸部ICA病変の評価目的に頸動脈超音波検査が施行された.頸動脈超音波検査では左頸部ICAにflapを認め,カラードプラにてentry血流を検出した.また病変の真腔側に可動性血栓がみられた.第7病日に頸部脳血管造影検査が施行され,外傷性解離性動脈瘤と診断された.経過観察目的に施行された第9病日の頸動脈超音波検査では真腔側にみられた血栓は消失し,偽腔へのentry血流が顕在化し偽腔径の拡大を認めたため,担当医に速やかに報告した.第12病日の頭頸部CT検査にて,さらなる偽腔の拡大が確認されたため,第13病日に左浅側頭動脈・中大脳動脈吻合による血行再建術ならびに左ICA結紮術が準緊急的に施行された.頸動脈超音波検査を併用しBCVIの経過観察を行うことで,可動性血栓の消失と偽腔の急速拡大を早期に確認することができた.侵襲的な治療介入へ繋げられたことはBCVI急性期における頸動脈超音波検査の有用性を示していると考えられた.

Key words: blunt cerebrovascular injury; carotid artery ultrasonography; dissecting aneurysm

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