超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 44(2): 240-247 (2019)
doi:10.11272/jss.44.240

研究Research Paper

心電図自動解析による左房負荷の臨床的意義(第二報)左房拡大例を用いた検討Clinical Significance of the Left Atrium Overload by the Electrocardiogram Automatic Analysis (Second Report)Examination by the Left Atrial Dilatation Cases

1国立病院機構宇多野病院臨床検査科Department of Clinical Laboratory, National Hospital Organization Utano Hospital

2国立病院機構京都医療センター臨床検査科Department of Clinical Laboratory, National Hospital Organization Kyoto Medical Hospital

3大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻機能診断科学Division of Functional Diagnostics, Department of Health Sciences, Osaka University Graduate School of Medicine

受付日:2018年8月7日Received: August 7, 2018
受理日:2019年1月15日Accepted: January 15, 2019
発行日:2019年4月1日Published: April 1, 2019
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目的:左房拡大例を対象に,安静時標準12誘導心電図(ECG)の自動解析による左房負荷の出現頻度を調査し,P波持続時間の指標を含め,これらの臨床的意義について検討する.

対象と方法:経胸壁心エコー図検査にて左房拡大を認め,かつ同一日にECGが施行された50例を対象に,ECG自動解析およびP波持続時間の指標を含めた左房負荷の出現頻度を調査し,ECGによる左房負荷の指標と左室拡張能との関連性について検討した.

結果:ECG自動解析にて左房負荷と判定された症例は疑い例を含め8例(16%)に対し,目視計測にてPTF-V1≧0.04 mm・秒を示す症例は18例(36%),Morris index陽性例は11例(22%)であった.II誘導におけるP波持続時間は119±7 mescであり,そのうち120 msec以上を示す症例は30例(60%),110 msec以上を示す症例は46例(92%)であった.

左室拡張能正常は1例,左室拡張能の判定困難は33例,左室拡張障害例は16例であり,自動解析にて疑い例を含む左房負荷8例中7例はGradeII以上の左室拡張障害例であった.

考察:ECG自動解析による左房負荷の出現頻度は50例中わずか8例(16%)であり,現在の診断アルゴリズムでは左房拡大のスクリーニングとしての意義は低く,P波持続時間の指標を用いることで診断感度が向上する可能性があると考えられた.

一方,これら8例中7例がGradeII以上の左室拡張障害例であったことから,自動解析による左房負荷は左室拡張障害に伴う左房圧上昇の存在を示唆する指標として利用できる可能性があると考えられた.

結語:ECG自動解析による左房負荷は,左房拡大のスクリーニングに用いる場合には診断アルゴリズムの改良を要するが,左室拡張機能障害に伴う左房圧上昇を示唆する指標の一つとして利用できる可能性がある.

Key words: ECG automatic analysis; LA overload; LV diastolic function

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