超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 44(2): 248-253 (2019)
doi:10.11272/jss.44.248

症例報告Case Report

超音波検査で診断が困難であった片側バセドウ病の1例One Case of Unilateral Graves’ Disease that Had Difficulty in Diagnosis by the Sonography

1島根大学医学部附属病院検査部Central of Clinical Laboratory, Shimane University Hospital

2島根大学医学部内科学講座内科学第一Internal medicine 1, Shimane University Faculty of Medicine

受付日:2018年4月27日Received: April 27, 2018
受理日:2019年1月24日Accepted: January 24, 2019
発行日:2019年4月1日Published: April 1, 2019
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症例は80代男性.体重減少および動悸が出現し近医を受診した.甲状腺中毒症を指摘され,当院に紹介となった.Free T4, Free T3は高値,TSHは低値であった.超音波検査では,右葉に限局して甲状腺腫を認め,内部は低エコーかつ不均質で血流は増加していた.一方,対側の左葉は腫大なく,内部はわずかに低エコーで血流の増加は認めなかった.両葉とも腫瘤性病変は認めず,プローブによる圧痛も認めなかった.血液検査および超音波検査所見から右葉はバセドウ病が疑われる所見であったが,左葉には同様の所見を認めず,びまん性の変化ではなかったため超音波診断は困難であった.TSH受容体抗体は陽性で,99mTcシンチグラフィにて,左葉に集積は認めず,右葉全体に集積を認めた.以上より右葉の片側バセドウ病と診断した.両葉のうち片側のみに出現するバセドウ病症例は過去に6例報告されている.右葉例が5例,左葉例が1例と右葉に出現する頻度が高く,本例も右葉のみにバセドウ病の所見を認めた.既報では,片側バセドウ病の超音波所見の特徴として,病側は腫大し,内部不均質で血流が増加している一方,対側は腫大なく,内部均質で血流の増加は認めず,びまん性の変化ではない点が通常のバセドウ病とは異なる.右葉にのみバセドウ病の所見が出現する原因として発生学的な要因が考えられているが詳細は明らかではない.甲状腺中毒症の超音波診断にあたり,病変が片側のみに限局している場合においてもバセドウ病を鑑別にあげる必要がある.

Key words: thyroid ultrasonography; thyrotoxicosis; unilateral graves’ disease; radioisotope examination

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