超音波検査技術

ISSN: 1881-4506
一般社団法人日本超音波検査学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
Japanese Journal of Medical Ultrasound Technology 50(4): 375-383 (2025)
doi:10.11272/jss.441

症例報告Case Report

塞栓源の特定に経胸壁心エコー図検査が有用であった甲状腺癌肺転移の肺静脈浸潤による急性下肢動脈閉塞症の1例A Case of Acute Lower Extremity Arterial Occlusion Due to Pulmonary Vein Invasion from Pulmonary Metastasis of Thyroid Cancer: The Utility of Transthoracic Echocardiography for Identifying the Embolic Source

1仙台市立病院臨床検査科Department of Clinical Laboratory, Sendai City Hospital

2仙台市立病院心臓血管外科Department of Cardiovascular Surgery, Sendai City Hospital

受付日:2024年10月11日Received: October 11, 2024
受理日:2025年3月27日Accepted: March 27, 2025
発行日:2025年8月1日Published: August 1, 2025
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今回,甲状腺癌肺転移の肺静脈浸潤に起因した急性下肢動脈閉塞を経験したため報告する.症例は60代女性.7年前に甲状腺乳頭癌,多発肺転移に対して甲状腺全摘および右側リンパ節郭清術を施行し,術後に放射線化学療法を施行した既往があった.202X年10月に右下肢疼痛のため救急搬送され,右下肢急性動脈閉塞の診断で外科的血栓除去術が施行された.来院時のCTでは右総大腿動脈~浅大腿動脈,深大腿動脈中枢側に造影欠損を認め,左房内の右肺静脈合流部近傍にも造影欠損が疑われた.経胸壁心エコー図検査では心機能は良好に保たれており右心負荷所見についても確認されなかったが,左房内に可動性を伴う構造物を認めた.心窩部アプローチによる描出を追加してさらなる評価を施行したところ,右上肺静脈から左房内に伸展する長径3 cm程度の構造物を明瞭に確認することができた.以上より,右上肺静脈から左房に連続して存在する構造物が塞栓子となったことが強く疑われた.術後の病理組織診断では血栓の一部に腫瘍細胞が認められ,肺静脈に浸潤した腫瘍細胞+血栓による動脈塞栓と考えられた.その後,肺転移の急速な進行により術後2か月で永眠された.各種検査所見や臨床経過より元々の甲状腺乳頭癌が未分化転化し,肺転移巣から急速に肺静脈内に浸潤して左房へ到達し動脈塞栓を生じたものと考えられた.塞栓源の特定に経胸壁心エコー図検査は有用であったが,心窩部アプローチによる描出を追加したことでより詳細な評価が可能であった.

Key words: pulmonary metastasis; pulmonary vein invasion; tumor embolism

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