超音波検査技術

症例は50代女性，左前胸部に腫瘤を自覚し前医受診．生検の結果，顆粒細胞腫と診断され，精査・加療目的に当院紹介となった．初診時の身体所見は左乳房内上方の鎖骨下に3 cm大，弾性軟の腫瘤を触知し，胸壁からの可動性はやや不良であった．乳房超音波では脂肪組織内に30×23×17 mm大の境界不明瞭な低エコー腫瘤を認め，一部大胸筋浸潤が疑われた．MRI検査では左前胸部にspiculationを伴う腫瘤性病変を認め，脂肪抑制T1強調像では筋肉に近い信号を呈した．針生検は良性顆粒細胞腫の所見であった．以上より，大胸筋浸潤を伴う乳腺原発の顆粒細胞腫と判断し，腫瘤摘出術を行った．手術検体の病理組織像は好酸性の顆粒状細胞質と核腫大のある腫瘍細胞が索状あるいは充実性の胞巣を形成して増殖していた．AE1/AE3（−），S-100（＋），CD68（＋），SOX-10（＋）で細胞質にPAS陽性であり，顆粒細胞腫の診断であった．組織学的に腫瘍周囲に正常乳腺組織を認めず，最終的に大胸筋原発の顆粒細胞腫と診断した．断端は陽性であったが追加切除や放射線治療は行わず経過観察の方針とした．術後1年の経過は良好で再発所見は認めていない．今回，当初は大胸筋浸潤を伴う乳腺原発の病変を疑ったが，結果として大胸筋原発の顆粒細胞腫と診断した比較的まれな症例を経験したので報告した．